サリーのきもち。

29歳独女サラリーマンの、日々のうんぬん。

ジャズ喫茶と私

吸い寄せられるようにふらっと Mary Jane

代官山の美容院へ行ったあと、ふらふらと渋谷駅に歩いて向かっていたら

いかにも老舗なジャズ喫茶が目に入った。

 

渋谷メアリージェーン

Mary Jane

食べログ Mary Jane

あぁ、こういう感じ好きだなって思って

次の予定まで少しだけ時間があるから、

ちょっとだけ。ちょっとだけ。

と、階段に足を掛けた。

 

二階に向けて一度くねるその階段は、

曲がり角あたりで、大音量のJAZZが私をとりまいて

入口までの少しの道のりを高揚させてくれた。

 

扉を開け中へ進むと、案外人がいる。

大抵、ひとりで本を読んでいる。

 

マスターに、お好きな席へどうぞ、と言われたので見渡すと、

相席になる大テーブルと、角の4〜5人用のソファ席のみ空いている。

「ソファでも大丈夫ですか?」

19時から予約が入っているのでそれまでであれば、とのこと。

今は18時。余裕だ、と思い、「大丈夫です」と席についた。

 

メニューを広げて、思い出した。

そうだ、私は昔、ジャズ喫茶でよくジンライムを飲んでいた。

学生の頃の話だ。

しばらく飲んでいないそのお酒を注文し、

目のやり場もないので手持ちの本を開いた。

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うなるベース音にぼうっとしながら、

初めて行ったジャズ喫茶のことを思い出していた。

 

 

「ジャズ喫茶マサコ」と私

高校生の時から、とかく下北沢が好きで。
毎日のように自転車で行って、徘徊して、帰ってきていた。
街中の小さな劇場のアングラな演劇を見たり、
老舗のロックバーを表から見て、扉の向こうの世界に憧れたり。

駅の近くに古いジャズ喫茶があった。
塀には、たまに、猿が居た。
その喫茶で飼われている猿だ。
いつも気になっていた。

 

その店は、ジャズ喫茶マサコといった。

 

ある日、猿を横目に、勇気を出して扉を開けると

そこは、言葉にならない素敵な空間だった。

誰も、無理しないで、そこに存在しているような。

作り物じゃない、ほんとうに歴史を重ねたレトロと、心地よいジャズの音。

 

私は一瞬で大好きになって、

その後もたまに通い、よくスピーカー近くの席に座った。

好きな音楽と居心地のよさという実利もさることながら、

私は、「ジャズ喫茶マサコに来ている自分」にとても酔いしれていた。

当時、ジャズ喫茶に行く友達なんてひとりもいなかった。

みんな、チェーンの喫茶店や、カラオケにばかり行っていたから、

ここを嗜好する自分がすごくお洒落だと思った。

 

酔いしれついでに、大学生の頃はよくジンライムを頼んだ。

就活中でリクルートスーツを着ている時も、ヒッピーのような私服を着ている時も。

なぜだかわからないが、当時の私にとって、ジンライムは格好良いお酒だった。

きっと村上春樹の本か何かに、お洒落な感じで出てきたのだ。

ちびちび嗜みながら、音楽に浸かる。

 

 

そのうちにマサコは閉店してしまった。

 

 

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***

 

 

MARY JANEも居心地がいい。

空きっ腹に向かって、つつつと流れるジンライム

すぐに私をぼうっとさせた。

この場所で存在感を消すために本を持ってみたものの、大して進まず、

壁に書かれた猫の絵の細部を観察したり、

ぼうっとした頭のなかで音楽をくるくる回した。

 

こんな居心地のいい場所が、そういえばあったなぁ。

1時間もあれば十分だと思ったのは浅はかで、

あっという間に締め切りの時間が近づいた。

 

あまり直前に出て、マスターをそわそわさせてもいけないので

15分前には御暇した。

階段を下りる私を、大音量の音楽が見送った。

また行こう、持つためだけの本を片手に。