選ばれるための戦いは、真摯にやるだけじゃ勝てないから、むず痒い。
いま、この本を読んでいる。
竹中平蔵さんは、周知のとおりの方。
もう一方の、安部俊樹さんという方は、私と同い年で、
NHK Eテレの「ニッポンのジレンマ」という番組に出演されていて、
たまたま観覧に行った際、存在を知った。
以来、とってもファンで、この本も手に取ってしまった次第なのです。
安部さんのファン話は、いつかまとめて書きたいと思っていますが、
今日は、この本の後半に出てきた、
竹中平蔵さんが仰っていたひとつを、メモしたい。
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曰く、
選挙の街頭演説は、ほんとうに難しい。
自分が実現を約束したい政策について、
前提から順を追って、わかりやすく説明しても、
だれも、足を止めない。
通りすがりの人との、コミュニケーション時間は、限りなく短い。
その一瞬で、インパクトのある単語や振る舞いで、惹きつけないといけない。
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そうだよなぁ、
竹中さんが、その場で話し続ける数時間は、
通り過ぎる人たちの、一瞬一瞬の積み重ねで構成されていると思うと、
発信者には、それはもう、果てしないエネルギーが必要だろうと思う。
どんな政策をしてくれるか?
それを基準に、私たちは選ぶはずなのに、
真摯に、まじめに、政策を語られても、
私たちは、その人を選ばない、という、矛盾。
さて。
上記に思いを巡らせていたら、別の話を思い出した。
デザイン会社の、コンペの話だ。
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とあるデザイン会社A社は、コンペに参加しない主義だという。
なぜなら。
例えば、クライアント先B社が、
自社商品のパッケージデザインを、リニューアルする際の
コンペを実施したとする。
A社が、
その商品のコンセプト、マーケットニーズ、今後の方向性、等を
きちんと考えてみると、
実は、がらがらぽんの変更をする必要はなく、
一部分を、すこしマイナーチェンジすれば、
商品と顧客とのコミュニケーションは、大きく改善するだろう、と
考えたとする。
でも、これをコンペで出したら、負けてしまう。
競合デザイン会社が、がらがらぽんの、派手で見栄えのいい提案をすると、
そちらの方が、魅力的に思われてしまう、という。
結局、「コンペで勝ちやすい提案」が通り、
「ほんとうに顧客にとって意味のある提案」が、通らない、ということが
起きてしまう。
それは、本意でない。
だから、コンペには参加しない。
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ふむ。
私にも、同じような経験がある。
営業時代、プレゼン対決で、競合に負けた。
私が作ったプレゼンは、デザイン会社のコンペと同じで、
相手の会社にとって、いいものを素直に書いたものだった。
負けた時、上司が言った。
「いいものを実現するためには、まずは選ばれるための戦いをするべきだった。
自分の責任だ。申し訳ない。」
ふむ。
選ばれたい理由が、本質的なものであればあるほど、
選ばれるための戦いは、
やってて、なんだか、きもちわるい。
でも、世の中そういうふうに、できていることが多い。
生きていくって、
コツがいるなぁ。